弁護士の女

さて、次に印象に残っているのは、今でも仲良くしている友人の一人となった女性です。転職時、総合職を希望して入社し、仕事に対する意欲に燃えていた彼女ですが、社内事情もあり一般事務と同じ業務を担当して5年、突然「私、弁護士になる」という決意を表明し、退職していきました。
それを聞いた社内の誰もが「そんなの、なれっこないよ!」と思っておりました。
確かに彼女の出身大学は中々の有名校であり、そこの法学部を卒業、又お父様、お兄様も弁護士稼業を営んでいるのは知っていました。

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けれど一緒に仕事をした5年余りの彼女の行動を見る限り、私には彼女が「頭がいい」というよりは、「変わり者」という印象の方が強く、それは一緒に働いてきた同じ部署の皆も同じ印象を抱いていたからです。
彼女の変わり者エピソードには事欠かなく、例えば余り落ち着きのない彼女は、仕事が暇な時は席にいられず社内巡回を始め、あちこちの知り合いの部署に顔を出しては「ねぇねぇ、何してんの?」と声かけをしては「し‥仕事に決まってるでしょ!」と怒られたり、又当時社内で使用していた、コピー機を使う為のカードキーというのがあったのですが、どうしたらそうなるのか、そのカードをシュレッダー機で裁断してしまい細切りになった残骸を持って帰って来て始末書を書いたり、朝、更衣室で会うと、左右の靴(靴下じゃなく靴ですよ、靴!)を全く違うものをそれぞれ履いてきていたり。


何より強烈だったのはその性格で、例えば彼女を含めた友人三人で今度〇日に、会社帰りに一緒にご飯を食べに行こうと約束をし、その当日、もう一人の友人と私は約束の時間に、待ち合わせの場所で彼女を待っている訳ですが、30分以上も待てど暮らせど彼女はやって来ない…。しびれを切らして見に行くと彼女は残業をしており、私達を見て開口一番「あれ、まだいたの?約束なんて当日にならないとわかんないんだから来なかったら帰ればいいのに」と言われて二人で茫然とし、喧嘩した事も何度もあります。
そんな印象の強い彼女だったので、皆から「あいつなめてんな。そんな簡単になれるもんじゃない」と言われてはおりましたが、それから3年後、見事に彼女は弁護士試験に通り、晴れて弁護士になったのでした。やっぱり頭は良かったのね~。まぁおっちょこちょいの彼女らしく、本当は2年目に合格していたのですが、書類申請手続きを忘れていたとかなんかでその後丸々一年を棒に振っていました。本当に何やってんの(笑)。
その後、弁護士としての就職活動には多少難航しておりましたが、今は大手企業の法務部に在籍し、あちこちに出張をし、沢山の案件を抱えるキャリアウーマンとして大活躍しているようです。


晴れて弁護士になった後、どうして転職しようと思ったのか聞いてみたのですが、「だって前の会社に入社した時、上司から『君の業務は備品担当だよ。備品というのはボールペンとか…』と聞いた時から転職しようと思ってた。」と言っておりました。
まさに適材適所という事なんでしょうね。備品発注も誰かがやらなければならない立派な業務の一つですが、彼女にとっては物足りず社内をフラフラとするような行動となっていたわけで、今では上司から、次の人事で部長職に、と言われている程だそうです。


いや~人ってやる気次第で本当にどうにでもなるんだなぁ。
ちなみに当時の約束ドタキャンについては「あの頃は本当に非常識だったわ。ごめんよ」と言っておりました。大人になったね(笑)

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